国会質問アーカイブ

3/23 憲法審査会(発言)

本庄さとしYouTube

質問要旨

日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題(我が国の安全保障との関係について)

1.フェイクニュースなど国民投票と安全保障との関係について

2.ミサイル反撃能力の行使について

議事録

○本庄委員 立憲民主党の本庄知史です。
 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題が議題ということで、私からは、我が国の安全保障との関係について申し述べたいというふうに思います。
 まず、憲法改正の国民投票においては、広告放送をめぐる議論と並んで、デジタルデモクラシーの課題が大きな論点となります。特に、フェイクニュースを始めとする悪意を持った偽情報の流布が及ぼす影響、そして、外国政府等の外部勢力による関与、介入の可能性と危険性について十分留意する必要があります。
 例えば、二〇一六年、米国大統領選挙におけるフェイスブック個人情報の不正利用、いわゆるケンブリッジ・アナリティカ事件や、英国のEU離脱、ブレグジットの国民投票ではフェイクニュースが社会問題となりましたが、これらはロシアの関与が指摘をされています。
 ロシアについては、二〇一四年のクリミア半島の併合、昨年のウクライナ侵攻における、ウクライナがロシア系住民を大量虐殺しているといったフェイクニュースはよく知られています。また、中国については、二〇二〇年の台湾総統選挙において拡散された、蔡英文総統が学歴詐称をしているといったフェイクニュースへの関与も指摘をされています。我が国では、昨年八月、当時の岸防衛大臣がウクライナを非難したかのように見せた虚偽のツイートが拡散いたしました。
 憲法改正の国民投票に際して、こういった外部勢力の関与、介入によって世論が操作され、投票結果に影響が出るということがあってはなりません。立憲民主党は、こういった問題意識から、国民投票広報協議会とファクトチェックを行う民間団体等との連携や、外国人等からの資金援助の禁止などを盛り込んだ国民投票法改正案を提案しています。
 他方、政府の側でも、昨年十二月の国家安全保障戦略において、偽情報の拡散も含め、認知領域における情報戦への対応能力を強化するとしていますが、国家による恣意的な情報統制につながらないよう、十分留意しなくてはなりません。
 以上を踏まえ、日進月歩のインターネットやデジタル分野に係る諸問題について、安全保障の観点からも議論を重ね、必要十分な法改正を行う必要があるというふうに考えます。
 次に、今申し上げました国家安全保障戦略を含む安全保障関連三文書についても、この機会に言及をしたいというふうに思います。
 今国会では、衆参予算委員会を中心にこの三文書について議論がなされていますが、憲法との関係で様々な疑義が生じています。
 特に、ミサイル反撃能力の行使については、一九五六年政府見解で、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるとされていますが、これは、一般に海外における武力行使を禁じた憲法九条の例外中の例外です。したがって、仮にミサイル反撃能力を保有するとしても、その使用に当たっては相当明確な基準と厳格な運用が不可欠です。
 その観点からいうと、第一の憲法上の疑義は、他国の攻撃の着手段階におけるミサイル反撃能力の行使についてです。
 政府は、実際に他国からの武力行使がなくても、その着手があった時点で武力行使があったとみなし、ミサイル反撃能力の行使が可能としています。確かに、法理論としては成り立ち得るとしても、現実には、移動する車両や列車あるいは潜水艦などから発射される他国のミサイルについて、攻撃の着手、すなわち発射前の段階で我が国領域に飛来、着弾するか否かを瞬時かつ確実に判断し、未然にたたくことはほぼ不可能です。もし判断を誤って、武力攻撃の意図のない他国にミサイル反撃能力を行使すれば、憲法違反はおろか、国際法も禁じている先制攻撃となりかねません。よしんば着手段階で攻撃を阻止できたとしても、当該他国のみならず、国際社会からも強い非難を受けることが予想されます。
 第二の憲法上の疑義は、存立危機事態におけるミサイル反撃能力の行使についてです。
 二〇一五年成立のいわゆる安保法制のうち、限定的な集団的自衛権の行使、すなわち存立危機事態に関する部分は憲法違反であるというのが立憲民主党の立場ですが、仮にこれを合憲とする政府の見解に立つとしても、限定的でない集団的自衛権の行使は違憲であるとの憲法解釈は今も変わっていないと承知をしています。そうであれば、限定的な集団的自衛権の前提となる存立危機事態の定義は、合憲か違憲かを分ける極めて重要な判断基準となります。
 しかしながら、存立危機事態は、中東の石油の途絶といった経済的理由や遠く離れた米国本土への攻撃であっても事態認定し得るなど、非常に曖昧な概念です。その曖昧な存立危機事態において、我が国自身が攻撃を受けていないにもかかわらず、我が国と密接な関係にある他国が攻撃を受けたことをもってミサイル反撃能力を行使するとなれば、それはもはや専守防衛とは言えず、憲法違反となる可能性が極めて高いと考えます。
 かねて違憲の指摘のある安保法制の存立危機事態と憲法九条との関係のみならず、かかる存立危機事態におけるミサイル反撃能力の行使についても当審査会において議論すべき重要な憲法課題であるということを申し上げて、私の発言とさせていただきます。
 以上です。