
5/13 参議院内閣委員会(答弁)
質問要旨
(質問者)
○木戸口英司議員(立憲)
議事録
○木戸口議員 衆議院における修正部分について質問をいたします。
今日は、衆議院における修正案提出者本庄知史議員に御出席をいただきまして、ありがとうございます。
御承知のとおり、衆議院においては、通信の秘密を尊重する旨の規定の追加、国会報告の内容の明記、検討規定の創設の三点から成る修正が行われました。これらについては、立憲民主党の中でも時間を掛けて検討を行ってきた経緯があります。関係部門による会議、これは十回を超えた会議を我々重ねてきたことを記憶しております。特に国会報告の在り方については、通信情報の利用、アクセス・無害化措置の両面において、民主的統制が必要という観点から真摯な議論を行ってきたという経緯があります。
衆議院における質疑では、サイバー通信情報監理委員会から国会への報告内容を一層拡充していくこと、また、自衛隊が行うアクセス・無害化措置である通信防護措置については、自衛隊のシビリアンコントロールの観点から、措置の実施後逐次報告をしていくことを求めていたと承知しています。
こうした点について、修正協議においてはどのような議論が交わされ、どのように修正案に反映されたのか、また、修正協議の経緯全般や修正の意義についても御説明を願います。
○本庄さとし 木戸口委員にお答えいたします。
委員が今、御質問の中で強調されていましたように、今回の法案で規定されている措置というのは、公共の福祉の範囲内で憲法上保障されている通信の自由を制約する、そういった可能性のある法案だという中で、この制約を必要最小限度の範囲内にとどめ、かつ、目的を達成することができるかどうかという点が非常に重要であって、その際に国会による民主的統制というものがポイントになるということであります。
私ども立憲民主党は、こういったアプローチに立った上で、衆議院における質疑では、このサイバー通信情報監理委員会による国会に対する年次報告、この内容が、当初の法案では一行ですか、二行ですか、非常に簡素なもので、どういった報告内容になるかも分からないというようなものでありました。したがって、それを更に具体化、詳細化する必要があるということ、同時に、警察の措置と自衛隊の措置、一本での報告ということになっておりまして、これは今も変わっておりませんが、しかし、実力組織である自衛隊による報告というものはより慎重を期すべきではないかと、こういう考えの下、別建ての報告の仕方というものを提案をさせていただきました。特に、国際法上、武力行使に当たる可能性も排除されないという点も懸念点でございました。
しかし、政府・与党からは、こういった逐次報告を自衛隊にさせると、我が国政府がどのような事案を調査しているのか、どの攻撃者にどのような手法を用いて措置を実施したのかなど、手のうちが明らかになる、そういったおそれがあると、そして結果的に攻撃者を利することにつながりかねないと、こういう懸念が示されました。我々、やり方によってはそういった懸念も是正できるというふうには考えましたが、最終的に政府・与党と折り合うことができませんでしたので、この点については今後の議論に委ねるということで今回の修正からは外しました。
一方で、この民主的統制の強化策として、先ほど申し上げました監理委員会の所掌事務についての国会報告については、当該事項の承認件数やその概要といった必要的報告事項、これを更に具体化をいたしまして法律上に明記をする、そういった修正を行いました。政府が修正で列挙された事項以外の事項も含めて国会報告の内容の拡充に努めるということは当然だというふうに考えておりますし、その旨は衆議院内閣委員会の附帯決議においても明記をさせていただいたところです。
以上です。
○木戸口議員 ありがとうございます。
国会への報告内容が一層充実されたということは大きな前進だったと思います。その上で、まだこれから検討課題があるということも御指摘をいただきました。今後、この参議院の内閣委員会においても引き続きこの検討課題に当たってまいりたいと、そう思っております。
次に、国会報告を受けた後の国会における対応について伺います。
今回の修正協議において、民主的統制を図る観点から国会報告の内容が議論されましたが、その際に焦点となったのは、政府の対応が明らかになると手のうちをさらしてしまうことになり、今御指摘があったとおりですけれども、攻撃者を利するのではないかという点でありました。この点について、四月四日の衆議院内閣委員会において平大臣からは、国会の受皿の秘匿性を高めるか否かについては国会でお決めになること、保秘のレベルによって出せる情報が変化するというのは十分あり得ることなどと説明がありました。
他方、秘密保護法制と国会による監視との関係では、前例として特定秘密保護法や重要経済安保情報保護活用法がありますが、これらにおいては、国会の受皿について各法律に検討規定を設け、本法施行に向けて国会で検討され、国会法の改正等につなげてきた事実があります。しかし、今回の法案では、こうした国会の受皿についての検討規定は設けられておりません。
そこで、修正案提出者に、今回の修正においてそうした規定が置かれなかった理由、また国会の受皿の在り方として今後どのように検討していくべきと考えているのか、見解を伺います。また、民主的統制を図るため、政府には情報の公開についてどのような姿勢が期待されるのかについても伺います。
○本庄さとし 先ほども申し上げましたように、この法案のスキームにおいては民主的統制をいかに実質化するかということが重要なポイントです。そのためには、国会に対する報告の内容と同時に、受け手の国会側、この受皿の在り方が重要だと、こういうふうに認識をしてまいりました。
この点、特定秘密保護法の制定後に、特定秘密については国会の受皿として衆参に情報監視審査会が設けられました。また、先般、重要経済安保情報についても、この情報監視審査会が受皿になるということが衆参の本会議でも可決をされたところです。したがって、今回の法案についても、私ども、情報監視審査会で受けるということを念頭に置き、政府・与党とは交渉をいたしました。
一方で、政府からは、本法案は特定秘密や重要経済安保情報のように新たな秘密情報のカテゴリーを創設するものではないと、本法案に基づいて国会に提出される情報は、特定秘密や重要経済安保情報に当たるものもあれば当たらないものもある、様々なものがあると、結果的に、帯に短したすきに長しというようなことになる懸念がありますと、これが政府・与党からの御意見です。我々は、必ずしもそのようには考えておりませんでしたが、これは交渉事でしたので、この点については私どもも政府・与党の御意見を受け入れたということです。
その上で、今回の衆議院の修正においては、まず、いやしくも通信の秘密その他日本国憲法の保障する国民の権利と自由を不当に制限することがあってはならないということを明示いたしました。
この点については、政府からは、法律上担保されているので明記する必要はないと、法的効果もないというような説明が繰り返されておりましたが、私たちは、通信傍受法など他の法律に倣ってこの旨はきちっと明記すべきだというふうに考えて修正を入れました。これは与党も含めて御賛成をもちろんいただいた内容です。そして、先ほど申し上げました国会に対する必要的報告事項の明記、さらには、施行後三年後をめどとした検討事項と、この大きく三つを追加をした次第でございます。
本法案、施行して足らざるところあれば、検討事項に基づいて、国会の受皿の機能強化も改めて検討をする、必要があれば法改正も含めて所要の措置を講ずるということにしております。
また、国会の受皿の機能強化を待たずとも、民主的統制の確保のためには、国会が政府に説明を求める際には、誠実に対応し、説明責任を果たすことは当然だというふうに考えております。
国会法には秘密会の規定もあります。受皿である国会側の保秘の体制がきちっと整備をされれば、私は様々な形で政府からの情報提供を受けることは可能だというふうに考えております。そういった考えに基づきまして、衆議院内閣委員会の附帯決議第十項目に明記もさせていただいたところです。
以上です。
○木戸口議員 ありがとうございます。
やはり、今回の法案が法として成立して、この措置、運用の成否ですね、これはやはり、国民との情報共有と国民がしっかりと理解を進めていくこと、これに尽きるだろうと思います。そのためにもやはり国会報告というのは重要でありますし、これから運用が始まって、国会報告の在り方を我々も見ながら、この国会の受皿機能監視強化というところをまた更に議論を深めていければと、そう思っております。
それでは、最後に検討規定について伺います。
通信情報の利用等の規定の施行から三年をめどとした検討規定においては、インシデント報告、通信情報の取得、通信情報の取扱いの三点が検討項目として明記されております。
これらはどのような論点を念頭に置いて盛り込まれたのか、改めて伺います。特に、通信情報の取得については、一部で内内通信も検討するべきとの声も他会派からはあるわけであります。内内通信の扱いについても、衆議院での議論の経緯を含め、見解を伺います。
○本庄さとし 今、木戸口委員からもありましたとおり、御指摘の三点、検討項目となっております。
インシデント報告については、事業者との関係もありますので、その報告内容ですとか負担の在り方など、まだ今後の検討課題が残っております。
また、通信情報の取得あるいは通信情報の取扱いについては、今御指摘の内内通信を除外していることをどう考えるのか、現時点では入っておりませんが、とか、あるいは、機械的情報のみということになっておりますが、それが担保されるのかということとともに、それだけで十分なのかという議論も将来的にはあり得るかもしれないと、そういったことが念頭に置かれております。
御指摘の内内通信につきましては、今おっしゃったように、衆議院の内閣委員会でも対象にすべきだという議論もありました。一方で、平大臣を始め政府からは、九九・四%でしたか、は内外あるいは外外といったものであって、実態として内内はほぼゼロに近いという実態面のお話など御説明がありました。
賛否両論ある中での採決となりましたが、私は、議論の最終盤に、この安全保障の観点から、内内通信の利用を積極的に活用すべきだという意見に対して、政府からの御答弁で、この法案は内内通信の利用を前提に立っていないと、今申し上げたようなこととともに、将来内内通信の利用が必要となった場合には、今回の法律の立て付けとは全く違うため、憲法の制約の範囲内で別の法律をどう作るか、こういう議論が必要だという御答弁がありました。
つまり、憲法の求める通信の秘密等と公共の福祉との関係でいったときに、そこまで広げてしまうと今の法案では対応できないと、こういう御見解だったと思いますが、この点については、政府・与党と私どもの見解を一致させていただいたというところでございます。